お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
 大知さんはふっと微笑むと私の唇に人さし指をあてた。

「あなたには黙秘権があります」

 突然の言い回しに驚いて目を見開く。けれど大知さんはそのまま真剣な顔で淡々と続けていく。

「言いたくないことは言わなくてもかまいません。ただし、ここで話した内容はすべて証拠となります」

 彼の物言いにのまれ、私も真面目に目だけでうなずいた。

「そこで質問しますが、あなたは夫を愛している。生涯そばにいると決めている。……間違いありませんか?」

 余裕たっぷりに尋ねられ、つい反抗心が芽生える。

「異議は認められますか?」

「残念ながら棄却します」

 あまりにも間髪を入れない返事に噴き出しそうになった。本当の裁判ならありえない。もちろん異議など最初からないんだけれど。

 大知さんの目をしっかりと見て答える。

「間違いありません、認めます。……大知さんが好きです。ずっとそばにいるので、愛してください」

 どう返されるのかと不安な気持ちは、彼からの口づけで吹き飛ぶ。宣誓を封じ込めるように長く甘いキスに身を委ねる。

「千紗」

 熱っぽく名前を呼ばれ、微笑んだ。さて、大知さんは最終的にどういう判決を下すのだろう。彼のそばにいられるなら終身刑でかまわない。

 それを聞くのは後にして、今は言葉通り彼に愛されたい。

 私だけしか知らない大知さんに胸をときめかせながら、今度は自分から彼に口づけた。

Fin.
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