お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
 大知さんも私と出かけるのを楽しみにしてくれていたのかな。義務感だけじゃない。今だって夫婦の特別な時間を過ごそうと思ってベッドに来てくれたのなら、私も応えたい。彼に触れたい。

 思いきって大知さんの手に自分の手を重ねた。

「今も……独占してますよ。大知さんと結婚して……私は大知さんの妻ですから」

 照れが入り、消え入りそうな声になる。

 我ながら大胆な発言だ。これが彼の求めているものなのかは、わからないけれど。

「千紗」

 名前を呼ばれて、おそるおそる顔を上げる。すると大知さんがこちらに身を寄せてきて、額に触れるだけの口づけを落とした。

「さっきの言い分を訂正する。穴埋めじゃなくて、また俺とデートしてほしいんだ」

 至近距離で目が合い、にこりと微笑んだ。

「はい。次は大知さんの好きなところに連れていってくださいね」

「わかったよ、奥さん」

 柔らかい彼の表情に、胸が高鳴る。私も大知さんを独占していいんだよね。

 裁判所で裁判官として働いている彼を私は知ないけれど、パジャマを着てこんな他愛ない話をしながらくつろぐ姿を見られるのは、妻である私だけだ。

 訴えるように彼を見つめていたら、そのまま顔を近づけられ、そっと唇を重ねられる。

 目を閉じて受け入れていると、大知さんは啄むような口づけを幾度となく繰り返す。いつもそう。彼は大切なものを扱うように私に触れる。

 嬉しくないわけじゃない。でも……。
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