お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
 すらりと背が高く細身な印象のある大知さんだが、しっかりと筋肉がついていて厚い胸板から男の人なんだと実感する。

「千紗」

 彼の温もりを堪能していると、耳元で名前を囁かれた。その声色はいつも通り低く落ち着いている一方で、艶っぽさも孕んでいる。

 大知さんに名前を呼ばれるだけで、心拍数が上がっていく。

 大知さんは私の耳たぶに軽くキスをすると、そのままゆっくりと唇を首筋に移動させていった。

「あっ」

 反射的に自分でもびっくりするほどの甘ったるい声が漏れ、とっさに唇を引き結ぶ。

 けれど抱きしめられた状態で、身をよじるどころか首もほとんど動かせず彼にされるがままだ。

「んん……」

 そんな私の反応を面白がるように、大知さんは唇といつの間にか舌も使って私の肌を刺激していく。

 サラサラの短い髪が頬をかすめ、無意識に抱きしめるように彼の頭を抱え込む。指先を滑る大知さんの髪が心地いい反面、さっきから彼が触れたところに鳥肌が立ち、背中がぞくぞくと震える。

「だ、め」

 抵抗の言葉を口にするも大知さんは聞き入れてくれず、薄い皮膚に舌を這わせて、時折音を立てて口づけを落としていく。

 さらに空いている手は無防備な私の肌の上を滑り、指先や手のひらと、器用に触れ方を変えながら攻め立てられる。

「ん……やっ」

 声を押し殺そうとするのに勝手に漏れる。つい体に力を入れると不意に大知さんの動きが止まった。彼は顔を上げ、私をうかがうように見つめてくる。
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