お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
グラスにミネラルウォーターを注ぎ、姉のもとに持っていった。すると姉はグラスを受け取りながら笑顔で答える。
「ほら、裁判官って数年ごとの転勤が必須でしょ? 千紗の仕事なら臨時やパートでもできるし、どこにいっても募集はあるだろうから」
たしかに保育士と幼稚園教員の資格があれば、関連する仕事の求人はわりとどこででもありそうだ。
けれど、どんな立場でも仕事や子どもに対する私のスタンスは変わらない。
とはいえ私がそこまで深く考えていなかっただけで、裁判官と結婚するならついていくにしろ別居するにしろ、数年ごとの転勤を受け入れなければならないのは事実だ。
大知さんはお見合いのときに、私の仕事を気にしていた。
姉みたいに個人の法律事務所に就職している場合は、そこを辞めて次というのはなかなか考えてしまうかもしれない。
「千紗はそういうのに文句を言わずについてきてくれそうだものね。昔から押しに弱いのを大知くんも知っているし、貞淑で外聞の悪い真似もしない」
どうしてだろう。褒められているとも受け取れず、胸がチクチクと痛みだす。それをごまかすように声を振り絞って小さく尋ねた。
「そういえばお姉ちゃんは? 付き合っていた彼とはどうなの?」
大知さんとの結婚を断ったのも彼の存在があったからだ。姉は結婚を考えていないのか。しかし姉は眉尻を下げて苦々しく笑った。
「それがね、別れちゃったの。これならお父さんから大知くんのお見合い話をもちかけられたとき、断らなかったらよかったわ」
「ほら、裁判官って数年ごとの転勤が必須でしょ? 千紗の仕事なら臨時やパートでもできるし、どこにいっても募集はあるだろうから」
たしかに保育士と幼稚園教員の資格があれば、関連する仕事の求人はわりとどこででもありそうだ。
けれど、どんな立場でも仕事や子どもに対する私のスタンスは変わらない。
とはいえ私がそこまで深く考えていなかっただけで、裁判官と結婚するならついていくにしろ別居するにしろ、数年ごとの転勤を受け入れなければならないのは事実だ。
大知さんはお見合いのときに、私の仕事を気にしていた。
姉みたいに個人の法律事務所に就職している場合は、そこを辞めて次というのはなかなか考えてしまうかもしれない。
「千紗はそういうのに文句を言わずについてきてくれそうだものね。昔から押しに弱いのを大知くんも知っているし、貞淑で外聞の悪い真似もしない」
どうしてだろう。褒められているとも受け取れず、胸がチクチクと痛みだす。それをごまかすように声を振り絞って小さく尋ねた。
「そういえばお姉ちゃんは? 付き合っていた彼とはどうなの?」
大知さんとの結婚を断ったのも彼の存在があったからだ。姉は結婚を考えていないのか。しかし姉は眉尻を下げて苦々しく笑った。
「それがね、別れちゃったの。これならお父さんから大知くんのお見合い話をもちかけられたとき、断らなかったらよかったわ」