お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
「いや、かわいいよ。じゃあ、行ってくる」

 そう言って軽く唇が重ねられる。そつのない所作に数秒遅れて彼に返す。

「いってらっしゃい」

 それにしても大知さんのたったひと言で私の気持ちは浮上する。うれしい。単純だけれど大知さんに褒めてもらえるなら、これくらいの手間はなんでもない。

 やっぱり私、今まで気を抜きすぎだったのかな? 大知さんだってこっちの方が……お姉ちゃんみたいにしていた方がいいよね。

 仕事だって、キャリアアップとはいかなくても保育者としてももっと成長しないと。

 たしか大知さんが土曜日は仕事だと言っていたので、講演会に参加する決意を固める。

 出勤して萩野先生とちょうど顔を合わせ、土曜日の講演会について話していたら、そこに園長先生が現れた。

 せっかくなのでと萩野先生が川島先生の名前もあげ、三人ほど園から出席する旨を伝えたら、園長先生は満足そうに微笑む。

「それはよかったわ。きっと子どもへの接し方や考え方など、ためになるお話ばかりだと思いますよ」

 それを聞いて、講演会自体が楽しみになってくる。さすがに川島先生とふたりだけの参加なら気が引けたが、萩野先生も一緒なら気持ちも楽だし、仕事だと明確だ。

 講演会自体は夕方に終わるので、その後三人で食事に一緒に行く流れになるのも了承する。

「それにしても逢坂先生、今日はなにか特別な用事でもあるのかしら?」

 私の私服姿に改めて視線を送った萩野先生がニコニコと尋ねてきた。おかげで、なんだか照れくさい気持ちになる。
< 89 / 128 >

この作品をシェア

pagetop