お見合い仮面夫婦の初夜事情~エリート裁判官は新妻への一途な愛を貫きたい~
「もうすぐ着きますよ」

 川島先生が先導し行き着いたお店は、ビルの中に入っているモダンな感じの居酒屋だった。女性同士やカップルでも気軽に来られる雰囲気で、創作料理が人気らしい。

 川島先生にお店選びを任せていたが、正解だったと改めて思う。萩野先生は「素敵ね」と店内をまじまじ眺めている。個室風の席に通され、私たちは腰を下ろした。

 おしぼりとお通しが配られ、萩野先生はメニューを見ずに店員さんに声をかける。

「とりあえず生にするわ。川島先生と逢坂先生は?」

「俺も生で」

 打てば響くように川島先生が答え、それに続きぎこちなく注文する。

「あ、ジンジャーエールお願いします」

 私の回答に萩野先生と川島先生の視線が向けられた、気がする。対する店員さんはさっさと去っていった。

「逢坂先生、アルコール飲めないんですか?」

「まさか、おめでた?」

 川島先生と萩野先生に矢継ぎ早に尋ねられ、萩野先生の質問に大きく首を横に振った。

「ち、違います! 初めてお酒を飲んだときに悪酔いして、それから飲んでないんです」

「あら、もったいない。でも、また今飲んだら違うかもしれないわよ?」

 あっけらかんと返す萩野先生に苦笑する。続けて川島先生から違う角度から質問が飛んだ。

「旦那さんは飲んだりしないんですか?」

「付き合いや相手がいたら飲むみたいですけれど……そうですね、普段家では飲みませんね」

 どうしてそんなことを尋ねるのだろうと思うと、川島先生は納得したように大きく頷いた。
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