【SR】幸せな結婚
偶然出会った同期の新入社員が、寿生の息子であったことは嬉しい誤算だった。
もしかしたら、寿生に会えるかもしれない。
一生、寿生の近くに居られるようになるかもしれない――。
母子家庭で育った亜弥は、幸せな家庭を壊してまで自分の恋を成就させたいとは思わなかった。
……いや、壊す必要はない。
むしろ、皆が幸せなままで自分の願いを叶える方法があるではないか――。
諦めかけた恋心に再び灯がともった亜弥は、必死で英太に近づいた。
今度こそ、絶対に想いを叶えてみせる……!
驚くほど父親によく似た英太の笑顔に、いつか来る寿生との生活を思い浮かべながら、順調に交際を運んだ。
そしてとうとう掴んだ結婚への道。
妻にはなれなかったが、寿生と同じ溝呂木姓を名乗り、同じ家で生活できる。
寿生の近くにいられる、最善の選択ができたことを心から喜んだ。