【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ

恋する血は1番甘い





『叶兎くん、お風呂ありが…』


雨に濡れて冷え切った体を温かいシャワーで丁寧に洗い流し、濡れた髪をバスタオルで拭きながら脱衣所を出ると、部屋の中央にある大きなベッドの上で叶兎くんが仰向けになって横たわっていた。

静かな寝息すら聞こえてこないほど、じっと動かない。


寝ちゃってる……?

起こしてしまわないように足音を殺してそっと近づき、手元にあった濡れた制服をハンガーへかける。


当然のことながら着替えなんて持っているはずもないので、濡れた服が乾くまでの間、服を貸してもらってるんだけど……。



私の身体をすっぽりと包み込んでいるのは、ブカブカの大きなTシャツと短パン。

どこをどう見ても、叶兎くんの私服だった。




……叶兎くんは…こういうの全然気にしてないのかもしれないけど……着てる私は全然落ち着かないよ……っ。




『叶兎くん、寝てる?』



ベッドの脇に膝をつき、顔を覗き込むようにして声をかけてみる。

けれど、やっぱり返事はない。

規則正しい呼吸に合わせて、胸元が小さく上下しているだけだ。


…それにしても、ここまでリラックスしてる叶兎くんは初めて見たかも。



起こしてしまったら悪いし、目を覚ますまでソファーに座って待っていよう。

そう思って、静かに背中を向けた──まさにその瞬間。



『きゃっ……!?』


右腕を後ろから強い力でグイッと引かれた。

不意を突かれてバランスを崩し、倒れかけた身体を支えようと慌ててベッドに手をつく。


けれど、その腕は容赦なく私を引き込み……気づいた時には、スポッと叶兎くんの胸の中に丸ごと捕まっていた。



『あ、あの、叶兎くんいつから起きて…っ!?』

「んー、最初から?」



抱きしめられたままパニックになって見上げると、叶兎くんが目を細めて低く楽しそうに囁いた。


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