総長は、甘くて危険な吸血鬼



叶兎くん、忙しいのにわざわざ来てくれたんだ。
あとでちゃんとお礼言わなきゃな……。

それに、天音くんも。
元々保健室にいたとはいえそばにいてくれたんだよね。


『そうだったんだ…天音くんも、ありがとう』

「いーよいーよ、胡桃っちは大事な仲間だからね」


大事な仲間、か。

元々転校生だった私をそういう風に言ってくれて、今の環境は本当に恵まれてるなって思う。


「で、体調の方は?」

『体調…さっきよりはだいぶ良くなったと思う』

「そっか、それなら良かった。何か欲しい物とかして欲しい事あったら遠慮なく言ってね」

『なんか……』

「ん?」


同級生にこんなこと言うのも変かもしれないけど、天音くんと話しているとふと頭に浮かんだ。
もし私にお兄ちゃんがいたら、こんな感じなんだろうなって。

天音くんはきっと…いいお兄ちゃんなんだろう。


『何でもない!なんか…なんとなく、天音くんの弟さんと妹さんは、こんな素敵なお兄ちゃんがいて幸せなんだろうなって』

「……」


……あれ
返事がない。

椅子に座ったままの天音くんの表情はベッドに寝そべる私からじゃ見えなくて、急に不安になって思わず声をかける。


『ごめん、気に障った…?』


──カタン

と椅子から立ち上がる音がした。



「……………ね、胡桃」



普段の明るいトーンと違って低い声で、私を呼んだ

いつもと違って、呼び捨てで。



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