総長は、甘くて危険な吸血鬼
ふと、
ある言葉が頭をよぎった。
“アイツとは2人きりになるな”
“これ以上の事は言えねぇけど…アイツといる時は、警戒心を持て。分かったか?”
今朝、九条くんに言われたこの言葉
何で今になって思い出したのか分からない。
「俺は………この場所が好きだ。これは、嘘じゃない…」
『え…?』
いつも明るい天音くんが、無気力に、呟くようにそう言った。
天音くんは時々よく分からない事を言う
でも今の言葉は…ますます意味が分からない。
──ギシ
ベッドが小さく軋む音。
天音くんが私の顔の近くに手をついた。
そしてゆっくりと、距離を詰めてきて──
……ま、待って…?!
『あの…天音くん待っ…』
その時、廊下の方からドタドタと走る足音が響いた。
瞬間、天音くんはすっと距離を取り何事もなかったように笑顔を取り戻す。
「おーおかえり、叶兎」