総長は、甘くて危険な吸血鬼
『叶兎くん!仕事終わったの?』
「いや、たまたま通りかかっただけだよ。2人こそいつのまに仲良くなったの?」
仲良く…なれてるのか?
凛ちゃんとまともに喋ったのついさっきが初めてだし…
「胡桃さんは…良い人だから好き」
「凛がそんなふうに言うなんて珍しいね」
凛ちゃん…!!好き…!!
なんて、たった一言で喜んでる私もだいぶちょろい。
「さっきナンパから助けてくれた」
「…え、まってそれどこのどいつ?圧かけてくる」
叶兎くんは今にも走り出しそうな勢いで、凛ちゃんの両肩をがしっと掴んだ。
お兄ちゃんモード全開の叶兎くんを見たのは初めてだけど、真剣なその横顔からは凛ちゃんを大事にしてる気持ちがひしひしと伝わってきて、思わず頬が緩んでしまった。
「お兄ちゃん大袈裟すぎだよ」
あはは……普段からこんな感じなんだろうな。
過保護なお兄ちゃんと、ちょっと呆れ気味の妹。
なんだか見ているこっちまで微笑ましくなる。
「あれ、叶兎じゃん。どうしたの?」
そうこうしていると、屋台の方から流風くんが両手いっぱいに食べ物を抱えて戻ってきた。
たこ焼きにクレープにチョコバナナ……祭りの屋台名物フルコース。
歩く屋台かってくらいの豪華さでちょっと笑ってしまう。
「ちょっと休憩してるとこ!」
「勝手に抜け出して“ちょっと休憩”ってどう言うことだ生徒会長」
「うわっ、秋斗か。びっくりさせないでよ」
叶兎くんが振り返ると、そこには腕を組んだ九条くん。