【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
『九条くん、後ろ!』
「っ!」
九条くんが来てくれたことに一瞬だけ安堵したのも束の間、九条くんの背後、路地の角から、BSの黒い特攻服を着た男たちがぞろぞろと姿を現した。
もうここまで追ってきたなんて……。
……いや、違う。
男たちの落ち着き払った様子を見る限り、走って追ってきたようにはとても見えない。
彼らは追ってきたんじゃない。
……最初から、この場所で待機していた……?
狭い路地裏という悪条件も重なり、人数の差はどうしようもなかった。
九条くんはあっという間に無数のBSの男たちに囲まれてしまう。
「さ、あっちは任せておいて俺らは行こうか」
『待っ、離して!』
必死に腕を振り払おうと暴れても、天音くんの手はピクリとも動かない。
そのまま乱暴に車の後部座席へと押し込まれ、逃げ出す間もなく、背後から口元を湿った布で強く塞がれた。
ツンとした、甘ったるい薬品の匂いが鼻腔を突く。
あ……これ……っ……やば…。
急激に頭が重くなり、視界がぐにゃりと歪んで全身の力が急速に抜けていく。
「胡桃っ…!!」
大勢の敵を殴り倒しながら、遠くで必死に私の名前を叫ぶ九条くんの声。
それを最後に、私の意識は途切れてしまった。