【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
天音くんの顔から、さっきまでの柔らかい笑顔は綺麗さっぱり消え去っていた。
氷のように冷徹な瞳でスマートフォンの画面を見つめると、天音くんは迷いなく着信拒否のボタンを押し、無言で通話を切る。
『天音…くん、何で私の携帯取ったの…?』
「……。」
一歩、また一歩と、天音くんがこちらへ足を進めてくる。
恐る恐る問いかけた私の声は震えていた。
……もう一度、思い返してみれば。
やっぱり、天音くんは時々様子がおかしかった。
みんなで笑い合っている時でも、ふとした瞬間に、今みたいな……どこか遠くの暗闇を見つめるような冷ややかな表情をしていた気がする。
あの時感じていた胸騒ぎは、間違いじゃなかった。
だから、もっとはやく、気づいていたら。
「ゴメンね、これが俺の仕事だからさ」
『仕事…?』
腕をぐいっと引っ張られて、一気に天音くんとの距離が縮まる。
でもここで抵抗したところで吸血鬼相手じゃ敵わないのは分かっていた。
「おい!…胡桃をどこに連れて行くつもりだ」
その時、路地の奥から怒声が響き渡り、息を切らした九条くんが猛スピードで駆け込んできた。
「あーあ、めんどくさいのが来ちゃったな」
天音くんは心底ウザそうに息を吐く。
「質問に答えろ」
「そんなの聞かなくてもわかるでしょ?」