【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ



「こんなところでイチャイチャするな」

「いたっ」



突然、パシッと乾いた音が響いて、叶兎くんが頭を押さえた。

甘ったるい空気に耐えきれなくなったのか、すぐ後ろにいた桐葉くんが、遠慮もなく叶兎くんの頭をはたいたのだ。



「ちょっと凪、暴力反対」



全く反省の様子を見せない叶兎くんに、桐葉くんは冷ややかな眼差しを投げる。

そのじとーっとした目は、言葉以上に辛辣だった。



「……叶兎、もう平気になったのか?」



後ろから肩を軽く叩かれて振り返ると、九条くんが小声で声をかけてきた。


平気……というのは、この前の話だろう。

叶兎くんが制御を失いかけた時、真っ先に止めてくれたのは九条くんだった。

あの時の冷静な判断と的確な対処法がなければ、もっと大事になっていただろう。



『うん!』



小さく頷くと、九条くんの視線がふと私の胸元に止まった。



「……もしかして、それって」



九条くんが指さしたのは、私が首にかけていたネックレス。

昨日、叶兎くんから渡された指輪だった。


これは吸血鬼が心を決めた相手に送るという伝統なんだとか。

無事に契約が完了したあとは、銀色から綺麗な金色に色が変わるため、一目で『契約済み』だとわかるらしい。



「したんだ、契約。…へぇ、ルビーの宝石にネックレスか…叶兎らしいな」

『叶兎くんらしい?』

「その指輪が伝統なだけで、埋め込む宝石は自分で決めるんだよ。渡し方も自由だし。その辺の話は聞いてねーの?」



首元の指輪を手に取ってよく見てみると、金色のリングの周りに小さく真っ赤な宝石が散りばめられていて、木の隙間から差し込む太陽の光を浴びてキラキラと美しく輝いていた。


叶兎くんの綺麗な瞳と全く同じ──深みのある、真っ赤なルビーの宝石。


ルビーの石言葉は確か、“情熱、愛情…”

あまりにも有名でロマンチックな宝石だから、私だってなんとなく意味を知っている。




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