総長は、甘くて危険な吸血鬼
『叶兎くんが選んでくれたんだ…。知らなかった』
緩んだ頬を抑えながら貰った指輪を眺めていたら
「ねー、何の話してんの?」
桐葉くんに怒られていたはずの叶兎くんがひょこっと私の前に来て言った。
「お前って結構重いよなって話」
「は?」
「自分の瞳と同じ色の宝石。…なー胡桃、ネックレスを送る意味って知ってる?」
「秋斗」
知らない、と答える前に叶兎くんが被せるように割って入った。
その声には隠しきれない焦りがにじんでいて、ほんのり頬を赤く染め珍しく余裕を失ったように見える。
「こういうのは!わざわざ伝えるものじゃないから!」
そんなに焦る事って何だろう…?
むしろ余計に気になってしまう。
あとで、こっそり調べてみよう。
その時だった。
──ブーッ
全員の携帯が一斉に震えた。
これは蓮水さんの合図だ。
「…行動開始の合図、全員、準備は良い?」
さっきまで狼狽していたのが嘘のように、叶兎くんの表情が切り替わる。
一瞬で場を支配するような圧をまとい、総長の顔になった。
その存在感に引きずられるように、皆の空気も研ぎ澄まされていく。
「作戦通りに」
彼の言葉を合図に、私たちは動き出した。