【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
『叶兎くんが選んでくれたんだ…。知らなかった』
緩んだ頬を抑えながら、貰った指輪を眺めていると──。
「ねー、何の話してんの?」
桐葉くんに怒られていたはずの叶兎くんが、ひょこっと私の前に顔を出して割り込んできた。
「お前って結構重いよなって話」
「は?」
「自分の瞳と同じ色の宝石。…なー胡桃、ネックレスを送る意味って知ってる?」
「っ、秋斗!!」
私が「知らない」と答えるより早く、叶兎くんが割って入るように大声で九条くんの言葉を遮った。
その声には隠しきれない焦りがにじんでいて、ほんのり頬を赤く染め珍しく余裕を失ったように見える。
「こういうのは!わざわざ伝えるものじゃないから!」
そ、そんなに焦る事って何だろう…?
むしろ余計に気になってしまう。
あとで、こっそり調べてみよう。
その時だった。
──ブーッ。
全員の携帯が一斉に震えた。
これは、蓮水さんの合図だ。
「…行動開始の合図。……全員気を引き締めていこう。みんな、準備は良い?」
さっきまで狼狽していたのが嘘のように、叶兎くんの表情が切り替わる。
一瞬で場を支配するような圧をまとい、総長の顔になった。
その存在感に引きずられるように、皆の空気も研ぎ澄まされていく。
「作戦通りに」
叶兎くんの言葉を合図に、私たちは一斉に動き出した。