【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ


まだ幼い妹と弟は力が弱く、他人に影響を及ぼす程ではなかったけど…俺はそうも言ってられなかった。

思春期を迎えた当時の俺は、身体の成長と共に能力が歯止めが効かないほど強くなっていて、自分自身で能力を抑え込む方法が分からなかった。


ただ施設の人たちと少し会話を交わすだけで、職員も、同じように施設で暮らしている幼い子供たちも、みんな俺の魅力に当てられて正気を失い、おかしくなっていく。


……俺一人に対する嫌悪や恐怖なら、まだじっと耐えられた。

けれど、その冷酷な視線は、何も知らない幼い妹と弟にまで容赦なく向けられるようになっていった。



「まだ小さいからって油断するなよ。あの子たちも、あいつと同じ血だ」
「吸血鬼なんだってね。話したら心を奪われるなんて、…気味が悪い」



心臓が、殴られたみたいに痛かった。

妹と弟は、何の罪もないのに。



……俺がここにいたら、この子達まで居場所を失ってしまう。



そんな毎日に耐えられなくて、1ヶ月も経たないうちに俺は1人で施設から脱走した。


お金も、帰る住む場所も何ひとつ持っていない状態で夜の街へ飛び出して。

何の計画性もないバカな暴走だってことは、自分が一番痛いほど分かっていた。


それでもあのままあの場所でじっと耐えていたら……心が、完全に壊れてしまうと思った。



だから……冷たい雨が降るあの夜、俺は一人で固く覚悟を決めた。




──俺がたった一人で外で金を稼いで、最低限の生活ができる基盤を作ってから、必ずあの3人を迎えに戻ろう。

唯一残された宝物である家族は……俺が命に代えても絶対に守り抜く、って。




傷ついて惨めな思いをするのは、俺一人だけで十分だ。






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