【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ





最初はとにかく、必死だった。




勢いのまま施設を飛び出したものの、中学生のガキが3人を養えるほどの大金を稼ぐなんて現実的に考えて到底無理だと分かっていたからだ。

そもそも中学生なんて真っ当な店じゃ雇ってもらえないし、両親もいなくて頼れる親戚もいない、施設を脱走した訳ありのワケありな俺を雇ってくれる酔狂な大人なんて、この街のどこを探したって存在するはずがなかった。



……だからもう、最初から俺には「正当に稼ぐ道」なんて用意されていなかった。



路頭に迷った俺が最初に選んだ手段は、街の不良やチンピラに喧嘩を売ること。

生まれ持った吸血鬼としての高い身体能力のおかげで、人間相手の喧嘩で負けることは一度もなかった。


顔を殴られて血を吐いても、倒した相手のポケットから財布を奪い取れば、数日間を生き延びる程度の現金は手に入ったのだ。


それに、喧嘩の最中に俺の魅了の力が無意識に発動して、相手は勝手に俺に浮ついて動きが鈍くなっていく。



……正直言えば、こんな回りくどい暴力を振るわなくても、最初から魅了の能力をフルに使って親戚や世間の大人たちを誘惑し、お金を騙し取る方がよっぽど簡単で効率的だったと思う。



けれど……それだけは、絶対にやりたくなかった。

そんな汚い真似をしてしまったら、俺の中でギリギリ保たれている何かが、二度と元に戻らないくらい木っ端微塵に壊れてしまう気がしたからだ。







……でも、そんなやり方が長く続くわけが無くて。






体はすぐに限界を迎え、頭は栄養不足で常にぼんやりと霞んでいた。

猛烈な空腹と全身の疲労感で、意識が飛びそうになり、気が狂いそうになる毎日。


もちろん、身体を安心して休められる暖かい家なんてあるはずもなく、毎日薄暗いゴミ溜めのような路地裏の隅で、寒さに震えながら夜を明かす日々。



…また、妹と弟の笑顔が見たい。

その一心だけで、俺は歩き続けてきた。



ここは元々族のような不良が溜まって荒れている町だったけど、もうほとんどの相手をしたと思う。もっと稼がなければいけないのに、先に稼ぎ場所が尽きてしまった。




このエリアは元々、暴走族やタチの悪い不良が溜まっている荒れた街だったけど…気づけば俺はほぼ全員の不良を叩きのめしてカツアゲし尽くしていた。

もっともっと稼がなきゃいけないのに、俺の体力が尽きる前に、稼ぎ場所の方が先に尽きてしまったのだ。



俺の身体の限界と、追い詰められた最悪の環境。


その二つが重なったある日──俺はついに、自分の『魅了』の能力を使って、見知らぬ大人から金を騙し取ってしまった。



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