総長は、甘くて危険な吸血鬼
最初はとにかく、必死だった。
勢いのまま飛び出したけど、3人を養える程の大金を稼ぐなんて到底無理だと分かっていたから。
そもそも中学生は雇って貰えないし、両親も頼れる親戚もいない施設入りのワケありの俺が雇われるなんて更に難しいだろう。
…だからもう、真っ当に稼ぐ道は初めから存在していなかった。
まず最初に、不良やチンピラに喧嘩を売った。
生まれ持った身体能力のおかげで負けることは1度もなくて、殴られて血を吐いても、財布を奪えばある程度の金額は手に入った。それに、喧嘩しているうちに相手は俺の魅了にかかってみんな動きが鈍くなる。
……正直、こんな回りくどい事しなくても、初めから魅了の能力を使って親戚や周りの大人達に縋ってお金を騙し取る方がよっぽど簡単だと思う。
けど、それをしてしまったら俺の中の何かが壊れてしまう気がした。
……でも、そんなやり方が長く続くわけが無くて。
体は限界で、頭は常にぼんやりして、
空腹と疲労で気が狂いそうになった。
勿論安心して休める家がある訳でもなく、
毎日薄暗い路地裏の隅で1晩を明かす日々。
…また、妹と弟の笑顔が見たい
その一心だけで俺は歩き続けてきた。
ここは元々族のような不良が溜まって荒れている町だったけど、もうほとんどの相手をしたと思う。もっと稼がなければいけないのに、先に稼ぎ場所が尽きてしまった。
俺の限界とその環境が重なって、
ある日、とうとう能力を使って人を騙してしまった。