【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
父は私の無事を確認すると、今度は叶兎くんの方へ視線を移した。
「叶兎くん。胡桃のこと、守ってくれていたんだね。ありがとう」
「いや……俺は………」
……ん?なんで叶兎くんの名前を知ってるの?
『……二人って、知り合いなの?』
頭の上に大量のハテナを浮かべながら思わず問いかけると、叶兎くんは珍しく言葉に詰まり、気まずそうに父へ助けを求めるような視線を送った。
「……知り合い、というか………」
母がそっと私の肩を抱き寄せ、柔らかな声で告げる。
「あのね……私たち、胡桃に言ってないことがあるの」
『……言ってないこと?』
私の両親が…何かを隠しているのは気付いていた。
だって、急に引っ越したり、仕事で家に帰って来れなくなったり。
明らかに不自然なことが多かった。
でも、言わないってことは知られたくなかったんだろうし、当時は無理に聞くつもりもなくて。
でも、その次の瞬間──父の雰囲気ががらりと変わった。
いつもの朗らかな明るさは影を潜め、場を圧倒する重厚な空気が病室を満たす。
叶兎くんが総長の顔をする時と似た、一種のカリスマ性。
「胡桃。俺はな────吸血鬼で……トップとして吸血鬼界を束ねてるんだ」
一言一言が、床に重く落ちるようだった。
思わず息を呑み、言葉を失う。
『……は……!?え、え!???』
耳にした言葉の意味が理解できなくて、頭が真っ白になる。
びっくり、なんて生易しいものじゃない。
いやいやいや、え?
隠し事のスケール大きすぎるでしょ……!
まあ、吸血鬼なのは……私が純混血として叶兎くんと契約した時点で確定だったから、父が吸血鬼だと言われても、そこはまだ納得できる。
でも、「吸血鬼界のトップ」って何!?
視界の端ではみんなも驚いたように固まっていて、春流くんと桐葉くんが呟いた。
「胡桃のご両親が……」
「苗字一緒なのはたまたまだと思ってた……まさかほんとに……」