【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
「今度、みんなにもちゃんと話すから。もう少しだけ待って。」
ちゃんと話す……何のことだろう。
私のお父さんと関係がある事…?
どういう意味かと聞く前に、飛鳥馬くんはわざと話題をすり替えるように言葉を続けた。
「ていうか胡桃さ、叶兎と話したいなら話しかけに行きなよ。なんでそこで遠慮してるの?」
『……!』
急に一番触れられたくなかった痛いところを突かれて、私は反射的に視線を明後日の方向へと逸らしてしまう。
図星すぎて、何も言えなかった。
「胡桃が行かないなら僕が行くけど」
『えっ?それってどういう──』
「どうもこうもないよ。見てるこっちがじれったい。……胡桃のそんな顔、麗音さんに見せられないし。」
『待っ……!』
私の制止の言葉が言い終わるよりも早く、飛鳥馬くんはすっと歩き出していた。
彼のスタスタとした足取りには迷いが一切なく、あっという間に私の横を追い越していく。
慌ててその背中を追いかけると、飛鳥馬くんはふいに立ち止まり、ゆっくりと振り返った。
「ま、僕に任せてみな。」
ほんの少し、いたずらっぽく笑って。
……任せるって、なにを……?
飛鳥馬くんはそう言い残すと、返事をする隙すら与えずにそのまま背を向け、カサリと落ち葉を踏み締めながら夜の並木道を歩み去っていった。
胸の奥がざわめく。
一体、何をどうするつもりなんだろう。
去っていく背中を目で追いながら、私はゆっくりと夜空を見上げた。