【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
『……私のお父さんが?』
探るように言葉を重ねると、一瞬、飛鳥馬くんの瞳が揺れた。
けれどすぐに目を伏せ、いつもの穏やかな笑みを浮かべる。
「……聞こえてたのか。」
苦笑混じりのにそう言った飛鳥馬くんは特に否定するでも焦るでもなく、穏やかだった。
「……好奇心があるのはいいことだけど、そうやって他人に踏み込む癖、いい加減やめた方がいいと思うよ。」
『あっ……ごめん、そうだよね……』
言われてハッと正気に戻り、勝手に会話を聞いてしまった申し訳なさから素直に謝った。
でも、飛鳥馬くんの表情を見る限り、私に対して本気で怒っているわけではなさそうだった。
…飛鳥馬くんって……いまだに上手な接し方が分からないや……。
なんというか……飛鳥馬くんはいつも、誰に対しても一定の距離を保っている気がする。
表面上は誰にでも優しくて親切なのに、ある一定のラインからは絶対に心の中へ踏み込ませてくれないような、冷たい圧のようなものがいつも壁として存在している。
出会ったばかりの頃の天音くんも似たような雰囲気を纏っていたけど、それとはまた違うような。
「……天音の時も、怪我の時だってそう。危険を顧みずに誰かのために動く。」
飛鳥馬くんの視線がまっすぐ私を射抜いた。
「だから、放っておけない。」
『……え?』
その言葉の意味を探す間もなく、一拍置いて静かに呟く。
「……ほんと、麗音さんにそっくり。」
『……!やっぱり、お父さんと……!』
思わず一歩近づいた私に、飛鳥馬くんは苦笑して目を細めた。