【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ




数日後、俺は白星学園の一年生として正式に編入した。


制服の襟を整え、鏡の前で深呼吸する。

見慣れない制服姿。
“時雨”ではなく、“羽雨”としての新しい日々が始まる。



──監視対象、赤羽叶兎。

生徒会長であり、街の治安を担う《White Lilly》の総長。



編入して最初の数日間は、生徒会のメンバーや治安維持の動きには一切干渉せず、離れた場所から遠巻きに動向を観察していた。

けれど……ただ陰から行動を追いかけているだけじゃ、人間としての本当の本質や深い部分は見えてこない。


本当にあいつという人間を理解するなら、ある程度は懐へ飛び込んで近くにいるしかない。


ただ、無闇に深入りすることは麗音さんから禁じられている。



……うーん、どうしたものかな。どうやって警戒されずに近づくか……。



そんな風に頭を悩ませていたある日の放課後、学園のすぐ近くにある商店街で、大規模な不良グループ同士の激しい抗争が発生した。

近隣住民からの通報が相次ぎ、街全体が騒然とするほどの大きな暴動。


最近はWhite Lillyの活躍もあって治安が劇的に改善されていると報告を受けていたけれど……これは一筋縄ではいかない惨状だった。


騒ぎを聞きつけて現場へ急行するWhite Lillyのメンバーの後ろから、俺も気配を消して背中を追う。



現場に到着して目にした戦況は……正直言って、圧倒的に不利だった。


一般市民や買い出し中の生徒を庇いながらの戦闘は、チームの連携が少しでも乱れれば一瞬で瓦解してしまう。



……あんな雑でバラバラな連携の取り方じゃ、無駄に被害が広がる……。

最前線では赤羽叶兎が不良チームの頭と激しくやり合っているみたいだけど、後方の味方への指示や配置のフォローが全く行き届いていなかった。



手を出すなって言われてるけど……これは完全に不可抗力だよな。

流石にこの惨状を放って置くのは気が引ける。


俺は路地裏から勢いよく通りへと飛び出すと、現場全体に響き渡るような大きな声を張り上げた。



「北側の通りは人払いして避難経路を確保してあるから無理に追うな!そこの、メガネの君は、あっちの階段下で後方警戒に回って!」



一瞬、場が静まる。


「は?誰??」
「メガネ?」


突然現れた俺に突然指示され怪訝な表情を浮かべていたけど、俺は構わず続けた。


「そこの茶髪の君、右の奴押さえて。あんたは後ろ見て。」


短く、的確に。

──久しぶりだな、“現場”の感覚。
最近は事務仕事が続いてたから。


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