総長は、甘くて危険な吸血鬼




「俺、自分のことでいっぱいで……最近全然話せてなかったよね……ごめん」



そう言われて、つい本音を漏らしそうになったけど、誤魔化すように笑って答える。



『……ううん、謝らないで。私、叶兎くんがすごく頑張ってるの知ってる。』



本音をを悟られたくなくて、少しだけ明るく声を弾ませた。



「……俺、一つのことに集中しすぎると、周りが見えなくなっちゃうみたい。だから、思ってること全部言って欲しい。胡桃の我儘なら、むしろ嬉しいから」



…ずるい。

そんなこと言われたら、隠せないじゃん。



『…………ほんとは……寂し、かった』



今まで胸にしまっていた本音を、ぽつりと溢した。

うつむいたまま、震える手で叶兎くんの袖を掴む。



『……同じ屋根の下にいるのに全然会えないし……どんどん遠くにいっちゃうみたいだし……でも、邪魔はしたくないし……』



言いながら、声が小さくなっていく。

別に、こんな事を言いに叶兎くんに会いに来たわけじゃなかったのに。

少しでいいから、顔を見て、話ができれば、それでよかったのに。



『…………私を、置いていかないで……』



そう言って顔を上げると、叶兎くんの瞳がまっすぐこちらを見つめていた。

驚いたように瞬いて、それから静かに揺れている。



「胡桃……」

『……って、ごめん。こんなこと言っても、困らせ──』

「胡桃」



遮るように、真っ直ぐな声が落ちる。



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