総長は、甘くて危険な吸血鬼
「……ふふ、あったかい」
首の後ろに落ちる声が、息みたいに柔らかい。
「胡桃の匂い、久しぶり」
な、なんか…今日の叶兎くん、いつにも増して甘い声なんだけど…!!
弱ってるせいなのか、その無防備さが逆に危険すぎる。
ただでさえ久しぶりで緊張しているのに、破壊力が半端なくてすでに心臓がバクバクしている。
『ん……っ』
次の瞬間、首筋に微かな痛みが走った。
その後甘い痺れが広がっていく。
……この感覚、久しぶり。
血を吸われるのももう1ヶ月ぶりだ。
とはいえ無言でいきなり吸うのはやめて欲しい。
心臓に悪い…!!
『叶兎くん……急に吸わないでよっ……!』
抗議の声を上げて振り返ると、叶兎くんはふっと笑った。
「……久しぶりの胡桃の匂いでつい」
…あ、叶兎くんの笑った顔、久しぶりに見たな。
『そういえば……ここ最近、血あげてなかったけど……どうしてたの?』
確か、契約者以外の血は受け付けなくなるって前に言っていた。
1ヶ月間も血を吸わずにいて大丈夫だったのかな…?
「秋斗に貰ったあのカプセルでしのいでた。でも……ちょっと、流石に限界があったかも」
苦笑混じりに答えながら、叶兎くんは私の肩に首を埋める。
『言ってくれればいつでもあげるのに……』
そう言った瞬間叶兎くんの腕の抱きしめる力が強くなる。
数秒の沈黙の後、叶兎くんは静かに口を開いた。