【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
『もー……とりあえず、一旦ベッド行こ!』
私は腕を支えて半ば引きずるようにしてベッドまで連れていく。
けれど叶兎くんは、ふらつく体でなおもデスクへ手を伸ばそうとする。
「待って、まだ今日中にやらなきゃいけない資料が……」
『え、この状態でまだ仕事するつもり……?!』
思わず素で声を張り上げてしまい、叶兎くんの袖をぎゅっと掴んで制止した。
叶兎くんは強引に立ち上がろうとしたけれど、限界を迎えた足元が力なく膝から崩れ落ち、そのままぽすんとベッドの縁に腰を下ろす形になる。
『いいから寝て……!いい加減休んで!!』
そのまま勢いで布団をガバッとかぶせると、叶兎くんは観念したように静かに目を伏せた。
もう仕事なんてできる状態じゃないんだから……お願いだから今夜くらい休んでよ。
流石にこんなにボロボロな叶兎くん、見過ごせるわけないじゃん……!
ようやく諦めて大人しく寝てくれたかと、胸を撫で下ろしたその時。
「………胡桃が一緒に寝てくれるなら、寝る」
ふいに、叶兎くんの口からボソッと突拍子もない言葉が飛び出してきた。
『えっ……な、なんで……!?』
思考が追いつかないうちに、叶兎くんの手が私の指下からそっとすくい上げ、指と指を絡めるようにしてギュッと握りしめてくる。
いつもよりずっと体温が高くて、熱を帯びた掌から温もりがダイレクトに伝わってきた。
「……嫌?」
熱で少しうるんだ瞳で、上目遣いに私をじっと覗き込んでくる。
その声は、甘えて懇願するみたいに柔らかくて。
…っ〜〜〜!!
もう、弱ってる時の叶兎くんもズルすぎる……っ!
そんな顔されたら断れるわけないじゃん……!
『……い、嫌じゃないけど……寝るまでだからね……?!』
真っ赤になった顔を隠しながら観念してそう言うと、叶兎くんは心底満足そうにふっと口元を緩め、布団の端をそっと持ち上げた。
その小さな隙間に、私はドキドキと跳ね上がる心臓を押さえながらそっと身を滑り込ませると、そのまま背中からそっと腰を引き寄せられ、体が隙間なくぴったりと密着する。
ぎゅっと力強く抱きしめられ、背中全体から叶兎くんのあたたかい体温と鼓動が伝わってきて、胸が破裂しそうだった。