総長は、甘くて危険な吸血鬼




「でも、ずっと言わなきゃって思ってたんだ。吸血鬼ってこと隠してたことも、あの日のことも、僕がしてきた全部のことも。……くーちゃんのこと、傷つけたのに。最後は君に助けられて……情けないよね」


自分自身を嘲笑うように、朔は笑った。



「くーちゃん、なんであんな無茶を……」

『だって、放っておけなかったから。』



自分でもびっくりするぐらい即答だった。

…でもこれが、私の本心だから。



『考えるより先に体が動いた、ってやつ』

「……僕なんかのために?」



その“なんか”という言葉に、胸の奥がきゅっと締まる。



『なんかじゃないよ。』



私は静かに首を振り、まっすぐに言葉を続ける。



『……今度は私が助けるって、言ったでしょ?』






────あれは夏の日の夕暮れだった。

小学3年生の、朔が引っ越す少し前のこと。




放課後の帰り道。

オレンジ色に染まる空の下、朔と私はいつものように川沿いのあぜ道を歩いていた。
ひぐらしの声が遠くで鳴いて空気は少し湿っている。

どうでもいい話で笑い合って、ふざけて、日が暮れるのも忘れるくらい楽しかった。


幼い頃のそんな何気ない毎日が、私にとっては宝物みたいに輝いていた。

でもそんなある日。



『ねぇ見て、四葉のクローバー!』

「どれ?…うわ、ほんとだ。くーちゃんそういうの見つけるの得意だよね」

『可愛い!持って帰ろっと!』



笑いながら川沿いの草原でしゃがみ込んだ、その瞬間——。


昨日までの雨で、土がぬかるんでいた。
足が滑って視界がぐるりと回転する。


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