【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
【side叶兎】
…それにしても、
どうしてあいつらが胡桃の事を知っていた?
さっきの集団は、間違いなく“BLACKSKY”の構成員。
全身黒い服が特徴で腕に水色の刺繍が入っている。
普通なら、胡桃のような「何の関係もない一般人」に目をつけるはずがないのに。
「一通り調べたが情報はない」
パソコンの画面から目を離さず、凪がキーボードを叩く音だけが部屋に響く。
「こっちも収穫なしだよー」
天音もソファーの背もたれに肘を預けながら、心底困ったように肩をすくめた。
生徒会寮に戻り、俺たちの持つ裏のネットワークまでフル活用して調べ上げたが、胡桃に関する不審な情報や怪しい噂はどこにも出回っていなかった。
裏社会と無縁の人間が、いきなりあんな物騒な組織からピンポイントで狙われることなんて、普通はあり得ない。
「胡桃、あいつらと知り合いなの?」
『ううん、知らない』
「じゃあBLACKSKYのことは分かる?」
『BLACKSKY…??』
胡桃の表情には、心当たりの欠片もない。
……本当に、何も知らないんだな。
面識もなければ、存在すら知らない。
なのに、向こうは「朝宮胡桃」という名前まで正確に把握して狙ってきていた。一体なぜだ……?
「BLACKSKY、通称BSは俺らWhiteLillyが1番敵対してる組織で──」
胡桃に噛み砕いて説明しようとした、その時だった。
ポケットの中で、ケータイがブブッ、と短い振動を告げる。
電話の相手は、“九条秋斗”