【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
《叶兎、今どこにいる?》
「生徒会寮、全員いる」
《ならスピーカーにしてくれ》
「分かった」
通話モードを切り替え、スピーカーボタンを押す。
秋斗から連絡が来たのはいつ以来だろうか。
どこにいる?は逆に俺が聞きたいんだけど。
潜入捜査が得意な秋斗は、普段からめったに寮には戻らず裏の情報を探っている。
いつも不在なのはそういう理由だが……受話器から聞こえるあいつの声は、いつになく張り詰めていた。
「秋斗から」
そう告げると、みんな俺のケータイの周りへと集まってきた。
《…いいか。朝宮胡桃という生徒を絶対にBSに渡すな》
「「…!!」」
衝撃の言葉に、場の空気が凍りつく。
《…何、もしかしてもう知り合い?》
知り合いも何も今ここにいる。
気まずい沈黙。
こんな血生臭い裏の話に胡桃を巻き込みたくはなかったし、不安にさせたくもなかった。
……でも、ここまで当事者になってしまった以上、本人にも聞いておくべきだろう。
《BSの総長が何年も前からその子の事を探してるらしい。目的は──っ悪い一旦切る》
「秋斗?」
雑音混じりに、遠くで走る足音と怒鳴り声。
嫌な気配が胸をざわつかせる。