【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
『叶兎くん、どうしたの?!具合悪い…?』
必死な声。
パニックになりながらも、俺を支えようとしてくれる健気さ。
それと同時に──俺の頭の中は、別の欲望で満たされてしまっていた。
……吸いたい
血が、欲しい
喉の奥が焼けるみたいに乾いていた。
体が、血を求めている。
俺は生まれつき吸血鬼の血が濃く、人よりも定期的に血を摂らないと気力や体力を保てない体質だ。
昨日の夜からロクに血を摂取していなかった上に、今朝は中庭で無駄に力を使ってしまった。
そのせいで、貧血を起こしたのだろう。
胡桃は俺の体を支えながら、そっとソファーに座らせてくれた。
「血……欲しい」
掠れた声で、本能のままに漏らす。
『血…?!う、うん分かった。それで体調が良くなるなら…』
…あれ、もっと拒否られるかと思ってた。
けど胡桃はほんの一瞬驚いただけでその瞳は真剣で、拒む色なんて一切なかった。
本人が良いって言ったんだし、なら遠慮しなくて良いよね。
俺は胡桃の肩に手を添え、細い首筋に顔を寄せる。
胡桃の肩が小さく震えた。
「……少しだけ」
そう囁いてから牙を立てると、温かい血が舌に広がる。
喉を通る血で、体の奥から力が戻ってくるのがわかる。
おまけに……信じられないくらい、美味い。
胡桃に出会うまで、こんなに甘くて美味い血が存在するなんて知りもしなかった。
今まで仕方なく生きていくために摂取していた血は、どれも薬みたいに苦くて不味くて、ただの不快な義務でしかなかったのに。
胡桃の血は違う。
極上の蜜のように甘く、濃厚で、一度味わえば二度と抜け出せなくなるほどの毒。
飲むほどに、もっと、もっと欲しくなってしまう。