【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ


『…も、もう大丈夫?』


口を離すと、胡桃が至近距離で俺を覗き込んでいた。

その表情は怯えでも嫌悪でもなくただ心配そうで。



「うん、ありがと。もう平気、ちょっと貧血だっただけだから」



本当は、もっと吸いたい。

倒れるまでこの甘い血を飲み干してしまいたい。


……けど、これ以上吸えば胡桃の体が持たない。


胡桃の真っ直ぐな視線が俺の顔に向けられる。

本当に体調が戻ったのかを確かめるように見つめてくるその優しさが……胸が痛くなるくらい、嬉しい。


でも同時に、守ると誓った相手に心配させている自分が、情けなかった。



『じ、授業始まっちゃうから私教室戻るけど、まだ体調悪いなら無理しないほうが──』

「ここにいてよ」

『…!?』



思わず口をついて出た言葉。


そう言って、俺は隣に座る胡桃の肩にぽすんと頭を預けて寄りかかる。

不意を突かれた胡桃は、全身を硬直させて目を見開いた。



『…あ、あの、叶兎くん?』

「何?」

『それは私の方が聞きたいんですけど…』

「……」



返事をせず、そのまま目を閉じる。


やっぱり……胡桃は違う。

今まで俺の周りに群がってきたどの女とも、根本的に違う。



親切で、お人好しで、優しい。

けれど、俺の『生徒会長』という肩書きや『吸血鬼』という容姿に媚びを売るような汚い目は一切なくて。


俺をただの『赤羽叶兎』という一人の人間として、対等に接してくれる。



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