【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ
「でも叶兎って割と運転荒いよね〜」
「いや分かる、割と容赦ないよね」
前方で飛鳥馬くんと春流くんの軽口が聞こえ、さらに不安が募る。
「いや、胡桃にお前らの時と同じ運転する訳ないから」
「え、ひどい」
「いーから、こんな話してないでさっさと進めよ」
天音くんが「へいへい」と適当に返事をして、2台が先に走り出す。
「胡桃、そこじゃなくて、落ちるからちゃんと掴んで」
他みんなのバイクを目で追っていたその時、突然手首をキュッと掴まれ、前へと力強く引き寄せられた。
『きゃっ……!?』
バランスを崩した私は、そのまま叶兎くんの背中にぎゅっと抱きつく形になってしまう。
距離、近っ……。
後ろからこんなにくっついたら、心臓の音が、絶対に聞こえてしまう。
そう思えば思うほど、ドクドクと胸の奥が激しく脈打って止まらなくなっていく。
「凪、少し回り道してくからあとよろしく」
「回り道?……あー、分かった。到着してからのことは何とかしておく」
桐葉くんが察したように頷く。
叶兎くんは右のアクセルを捻ると、右側の角で滑らかにハンドルを切り、細い路地裏の方へとバイクを滑らせた。
どうやら、他のみんなとは別行動をとるらしい。