私を、甘えさせてください
バッグを持って、すぐに家を出た。
あと10分で空川さんに会える。

『待ってる』と言ってくれた。
それだけで、気持ちが弾んだ。


インターホンを押すと、すぐにドアが開く。


「美月、もしかして走って来た? やけに早くないか?」

「だって、すぐ行くって言ったじゃない」

「そうだけど・・そんなに俺に会いたかった?」

「・・・・うん。会いたかったし、触れたかった」


空川さんの頬に指をのばすと、その手をすぐにつかまれて、唇をふさがれる。


「美月、さっきの電話から表現がストレートすぎて、俺がついて行けてない」

「ダメ・・?」

「違うんだ。嬉しくて、どうしよう・・って。
こないだ、美月に変なとこ見せちゃったから、会いたいって言い出しづらかった」

「空川さん・・・・」

「でも本当は会いたくて仕方なくて、昨日の夜帰ってきたんだ。結局、言えなかったけどね」


それを聞いて、思わず目を伏せた。
私も『嬉しくて、どうしよう』だ。


「空川さん」

「ん?」


私は顔を上げ、素直に伝えた。


「空川さんが好き」


今度は、空川さんが私から視線を外す。


「あー、もう、頭の中が美月でいっぱいだよ」


照れ笑いの空川さんとしたキスは、私の大好きな深くて甘いキスだった。

< 30 / 102 >

この作品をシェア

pagetop