私を、甘えさせてください
『・・・・帰りたくない』


私の身体に擦り寄る彼を、抱き締めながら考えていた。


さっきも感じたのだ。
何かがおかしい・・と。

彼の身に、何が起こっているのだろうか。


「拓真」

「ん・・」

「しばらく・・ここにいる?」

「えっ・・・・冗談・・だろ?」


彼が私を見上げて、驚いたように言う。


「ね、拓真」


私は、彼を抱きしめていた腕を緩めて、同じ目線まで身体を移動させて彼に伝えた。


「いまは何も聞かないから、いつか、話せるようになったら、話してくれる?」

「えっ」

「何か・・事情があるんでしょう?」

「美月・・・・」

「しばらく、ここに隠れてたら?」

「でも、迷惑じゃ・・」

「うーん、どうだろ。下着でウロウロできなくなるくらい?」


そう言って笑った私を、彼は自分の腕に抱え込んだ。

私の髪に顔をうずめながら、くぐもった声でつぶやく。



「俺は美月さえいれば、他に何もいらない・・・・美月を、失いたくない」



どう考えても、この人が私と同時に、不倫相手とも関係を続けているとは思えなかった。

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