私を、甘えさせてください
確かめてみる・・か。


「ね、拓真、聞きたいことがあるんだけど」

「ん・・何?」

「6日・・水曜の午後なんだけど、誰かと会う予定あった?」

「6日の水曜・・第一水曜の午後だろ?
経営会議と部長研修で、13時から夕方まで会議室に軟禁されてた」

「えっ」

「両方の議事録と、研修で使った調査結果が回ってなかったか?」

「あ・・・・」


そうだ。
確かに管理職宛てに回付されていた。

そこには出席者も書かれている。
よく見れば分かったはずなのに、気づかなかった。


「美月、6日の午後、何かあった?」


なぜそんなことを聞くのか?といった表情だった。


「あ、うん。外で拓真に似た人を見かけたんだけど、急いでた感じに見えたから・・。
もしかしたら何か問題があって外出したんじゃないか、って気になってたんだよね」


そう言いながら。

上手くごまかせたな・・と。
何でもないよ・・とアピールしたのに。


目の奥が一気に熱くなって、ギュッと目を閉じた。


「ん? どうした?」


私の肩が震えていることに、気づかれただろうか。


「美月?」


顎をすくわれた反動で、涙がこぼれた。


「どうした?」


私は首を横に振った。


「・・美月も、いまは言えない?」


一瞬迷って、私はもう一度首を横に振った。


「じゃあ、涙が落ち着いたら話してくれる?」


指で涙をすくって、微笑んでくれた。


「ね、俺、ちょっと自惚れていい?」

「自惚れる?」

「美月が泣いてるのって・・さ」

「うん」

「俺のことがすごく好きだってことだよね?」


そうだね。間違いない。

私は、何度もうなずいた。


「俺も・・」

「俺・・も?」

「美月が大好きだよ」


やっぱり・・。

彼は『愛してる』と言う人ではなかった。

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