くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
和室の座布団に胡座をかいて座るシルヴァリスと、ちゃぶ台を挟んでジャージ姿の父上が向かい合っているのは、違和感が半端ない何ともシュールな光景だ。
片手で湯飲みを持ち、緑茶を飲むシルヴァリスの姿は父親よりずっと様になっていた。
理子が魔国へ持ち帰った煎茶の茶葉を淹れて、初めて緑茶を飲んだシルヴァリスは眉を顰めていたのに、平然と飲んでいるのは流石は魔王である。
「へぇーシルヴァリスさんは北欧の国の方なんですか。しかも貴族様? だからそんなに顔も肌も綺麗なんですね。いやいや、男に綺麗とか失礼か。今風に言ったらイカメン?」
普段通りに見えた父親は、シルヴァリスと向かい合って座っているせいか頓珍漢なことを言う。
よくよく見れば、生え際が後退気味の額にはうっすら汗すらかいているし、かなり緊張しているらしい。
父親とは逆に緊張していないのは、化粧直しをバッチリしてきた姉の亜子。
「今度ぉ、シルヴァリスさんのお友達も呼んで飲み会をしません? これから義理とはいえ私がお義姉さんになるんですしーぃ交流を深めましょうよぉ」
上目遣いの亜子は語尾にハートマークを付けて、瞳を潤ませながらシルヴァリスを見詰める。
「亜子お姉ちゃん、婚約者さんに本気で怒られるよ」
飲み会を開いて婚約者さんと破談にでもなったら、両親は倒れてしまうかもしれない。
それ以前に、こんなあからさまに魔王へ媚を売るとは我が姉ながら恐ろしい。心配になった理子は隣に座るシルヴァリスの様子をこっそり伺う。
「亜子、いい加減にしなさい」
亜子の隣に座る父親が窘めようとした時、ずっと黙っていた母親が口を開いた。
「あの、本当に理子でいいんですか? この子は特に取り柄もないし、美人でもありません。ご覧の通り、家も貴方と釣り合う家柄でも無いですし」
不安げに眉尻を下げる母親に、シルヴァリスはフッと笑う。
ちゃぶ台の下、正座した太股の上に置いている理子の手の上に、シルヴァリスの大きな手のひらが包み込むように置かれた。
「私はリコだから傍にいて欲しいし、安らげるのです。部下たちも私の妻はリコしかなれないと分かっております」
「で、でも、姉の亜子も来年には結婚予定で、同時期の結婚、姉より先に式をするのはどうかと。それに我が家は、一般家庭ですし金銭的の援助は無理で、」
「我が部下に妻の家柄など気にする者はおりませんし、持参の品を気にされているのでしたらご心配なく。必要な物は全て此方で用意します。ドレスや装飾品、結婚式とやらは我が城か祭事用の神殿で行いますので、ご両親にご負担はかけさせません。時期については、来年、姉上が嫁ぐのでしたら、今年中に行えるようにでも手配しましょうか」
「「「城!?今年中!?」」」
母親の言葉に被せたシルヴァリスの台詞に、驚愕の表情となった三人の声が重なった。
「私が欲しいのは、リコだけ。他のモノは不要だ」
サラリと凄いことを言われた事に気付いて、私の頬は真っ赤に染まる。
恥ずかしさから俯きたいのを我慢し前を向いて、理子はぎょっとした。
「あんた……うっう、本気で理子の事を……娘を、理子を、よろしくお願いします」
ちゃぶ台に額を擦り付ける勢いで頭を下げた父親の瞳からは、ぼろぼろと涙が零れ落ちて頬を伝う。
「お、お父さん!?」
驚いて立ち上がりかける母親を、父親はキッと睨んだ。
「俺が認めたんだ! 理子は大学から家を出て自立して、我が儘も言わず弱音も吐かずに頑張ったんだぞ。母親が祝いの言葉もかけずに、文句だけを言うんじゃないっ!」
何時も飄々として、母親のやりたいようにさせていた父親が怒鳴るのは初めて見たかもしれない。
まさか怒鳴られるとは思ってもみなかったのだろう、母親の目が大きく見開かれる。
「理子! せめて新生活に必要な家電くらいお父さんに揃えさせてくれ!」
「お父さん……」
月々のお小遣いは少ないのにそこまで気にしてくれるなんてと、理子は胸が温かくなるのを感じた。
母親に祝ってもらえなかったどころか、姉を優先されてあからさまに金銭面を心配されて悲しかった事とか、全てが吹き飛んでいく。
父親はちゃんと自分を見ていてくれて評価してくれていた。
「御心遣い感謝します。また改めて、皆様を我が国へご招待しましょう。結婚式の招待状を心待ちにしていてください」
好青年の仮面を張り付けたまま、シルヴァリスは微笑んだ。
片手で湯飲みを持ち、緑茶を飲むシルヴァリスの姿は父親よりずっと様になっていた。
理子が魔国へ持ち帰った煎茶の茶葉を淹れて、初めて緑茶を飲んだシルヴァリスは眉を顰めていたのに、平然と飲んでいるのは流石は魔王である。
「へぇーシルヴァリスさんは北欧の国の方なんですか。しかも貴族様? だからそんなに顔も肌も綺麗なんですね。いやいや、男に綺麗とか失礼か。今風に言ったらイカメン?」
普段通りに見えた父親は、シルヴァリスと向かい合って座っているせいか頓珍漢なことを言う。
よくよく見れば、生え際が後退気味の額にはうっすら汗すらかいているし、かなり緊張しているらしい。
父親とは逆に緊張していないのは、化粧直しをバッチリしてきた姉の亜子。
「今度ぉ、シルヴァリスさんのお友達も呼んで飲み会をしません? これから義理とはいえ私がお義姉さんになるんですしーぃ交流を深めましょうよぉ」
上目遣いの亜子は語尾にハートマークを付けて、瞳を潤ませながらシルヴァリスを見詰める。
「亜子お姉ちゃん、婚約者さんに本気で怒られるよ」
飲み会を開いて婚約者さんと破談にでもなったら、両親は倒れてしまうかもしれない。
それ以前に、こんなあからさまに魔王へ媚を売るとは我が姉ながら恐ろしい。心配になった理子は隣に座るシルヴァリスの様子をこっそり伺う。
「亜子、いい加減にしなさい」
亜子の隣に座る父親が窘めようとした時、ずっと黙っていた母親が口を開いた。
「あの、本当に理子でいいんですか? この子は特に取り柄もないし、美人でもありません。ご覧の通り、家も貴方と釣り合う家柄でも無いですし」
不安げに眉尻を下げる母親に、シルヴァリスはフッと笑う。
ちゃぶ台の下、正座した太股の上に置いている理子の手の上に、シルヴァリスの大きな手のひらが包み込むように置かれた。
「私はリコだから傍にいて欲しいし、安らげるのです。部下たちも私の妻はリコしかなれないと分かっております」
「で、でも、姉の亜子も来年には結婚予定で、同時期の結婚、姉より先に式をするのはどうかと。それに我が家は、一般家庭ですし金銭的の援助は無理で、」
「我が部下に妻の家柄など気にする者はおりませんし、持参の品を気にされているのでしたらご心配なく。必要な物は全て此方で用意します。ドレスや装飾品、結婚式とやらは我が城か祭事用の神殿で行いますので、ご両親にご負担はかけさせません。時期については、来年、姉上が嫁ぐのでしたら、今年中に行えるようにでも手配しましょうか」
「「「城!?今年中!?」」」
母親の言葉に被せたシルヴァリスの台詞に、驚愕の表情となった三人の声が重なった。
「私が欲しいのは、リコだけ。他のモノは不要だ」
サラリと凄いことを言われた事に気付いて、私の頬は真っ赤に染まる。
恥ずかしさから俯きたいのを我慢し前を向いて、理子はぎょっとした。
「あんた……うっう、本気で理子の事を……娘を、理子を、よろしくお願いします」
ちゃぶ台に額を擦り付ける勢いで頭を下げた父親の瞳からは、ぼろぼろと涙が零れ落ちて頬を伝う。
「お、お父さん!?」
驚いて立ち上がりかける母親を、父親はキッと睨んだ。
「俺が認めたんだ! 理子は大学から家を出て自立して、我が儘も言わず弱音も吐かずに頑張ったんだぞ。母親が祝いの言葉もかけずに、文句だけを言うんじゃないっ!」
何時も飄々として、母親のやりたいようにさせていた父親が怒鳴るのは初めて見たかもしれない。
まさか怒鳴られるとは思ってもみなかったのだろう、母親の目が大きく見開かれる。
「理子! せめて新生活に必要な家電くらいお父さんに揃えさせてくれ!」
「お父さん……」
月々のお小遣いは少ないのにそこまで気にしてくれるなんてと、理子は胸が温かくなるのを感じた。
母親に祝ってもらえなかったどころか、姉を優先されてあからさまに金銭面を心配されて悲しかった事とか、全てが吹き飛んでいく。
父親はちゃんと自分を見ていてくれて評価してくれていた。
「御心遣い感謝します。また改めて、皆様を我が国へご招待しましょう。結婚式の招待状を心待ちにしていてください」
好青年の仮面を張り付けたまま、シルヴァリスは微笑んだ。