策略家がメロメロ甘々にしたのは強引クールなイケメン獣医師
「まだ卯波先生の診察に、補助で入ってないから、知らないことばかりです」

「緒花さんには、まだ卯波先生はミステリアスかしら」
 切れ長の涼しい目元がカーブを描くように下がり、ケラケラ笑う。

「今度から、卯波先生の診察にも入ったほうがいいわね」
「よろしくお願いします、勉強させてください」
「院長に伝えておく。診察と言えば」

 坂さんが思い立ったように、また教えてくれるみたい。

「卯波先生は、仕事上でも技術センスはもちろん、瞬発力や判断力とかに長けてるし、心身ともにタフで正義感が強い」

 イメージ通りだし、見ていても完璧だもんね。

「院長が、卯波先生を引き抜くときも大変だったのは、業界では語り草なのよ」

 おおお、業界話とは。初めて聞く話に興味津々。

「院長と卯波先生の最強タッグに、近隣の動物病院は戦々恐々としてるのは、今や伝説よ」

 坂さんの黒縁めがねの奥の目が微笑み、思いついたようにテンポよくつづける。

「卯波先生を例えるなら、そうね」
 坂さんが上目遣いで考えを巡らす。

「太陽みたいに、強い光を放たず目立たないけど、月あかりみたいに優しく人を包み込める温かい心の持ち主」

「月光浴で癒される感じですかね」
「いい表現ね、まさに卯波先生を表してる。ぴったりよ」

 院長の性格ね。院長はわかりやすいから、院長の性格はわかる自信がある。

 私が思う院長像は、こうね。

「院長は開放的で陽気で、周りを明るく照らして元気にする太陽みたいな心ですよね」

「それよくわかる。院長と卯波先生は、まるで太陽と月みたいよね」

「まさしく」
 二人で顔を見合せて微笑んだ。

 院長は、太陽で(みずか)ら盛んに光り輝く。
 卯波先生は、月で太陽の光を反射して光る。

 光の院長は、影の卯波先生によって支えられている。
 影の卯波先生は、光の院長によって綾なす。

 片方が欠けたら、周りまで崩れそうな強い力で引き合う。お互いに、なくてはならない存在。

「気になってたことは解決した?」
「おかげさまで。ありがとうございます」

「可愛い顔して。燦々と輝く太陽みたいな、いつもの明るい笑顔に戻ったわね」

 よく通る、にぎやかな声が近づいてくる。坂さんもおなじことを思ってたみたい。

「ラゴムの太陽が昇りましたね」
「今日も明るい太陽が、お顔を出したわ 」

 坂さんと二人で、談笑をそのまま引きずった笑顔で、院長に挨拶をした。
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