策略家がメロメロ甘々にしたのは強引クールなイケメン獣医師
「坂さんに聞いてよかったです。教えてくださって、ありがとうございます」

「いつでも聞いて。私たちは緒花さんの手助けをするためにいるんだから」

 優しさの中に力強さを感じる声や表情に、背中を押されたみたい。

 落ち着きを取り戻したら、もっともっと卯波先生のことが知りたくなった。

 本当はとても優しいところとか、優しさの表し方とか、卯波先生の隠れていた面が少しずつわかってきたから。

「ちょっといいですか?」
「ん?」
 坂さんが目を見開き、頬を緩ませる。

「卯波先生ってどんな方ですか?」
 ここは気になることを聞いてしまおう。

「院長は、お兄さんとか友だちみたいに気さくに接してくれますし、よく面倒も見てくれますし、性格がわかりやすいですよね」

「院長は取っつきやすいわね。卯波先生は感情を抑えて表に出さない感じ。さらりとしてて、物静かな印象で口数が少ないから、最初はわからなかった」

 坂さんもそうだったんだ。

「今はどうですか?」

「何事にも動じず平常心で落ち着いてるから、いてくれるだけで安心感を与えてくれるわよ。安心感を与えられるって、大切な資質よ」

 あああ、それわかる。安心感に納得して頬が、ふわりと緩む。

「あとは、ほとんど自分自身のことは話してくれないのよ。そのかわりどんな話でも、よく聞いてくれる聞き上手よ」

「聞き上手なんですね」
「どんな話でも付き合ってくれる。卯波先生に話すと、すっきりするのよ」
 私のくだらない話にも、付き合ってくれるかな。

「オーナーや患畜にも優しくて、同じ目線で物事を考えてくれるし、腰が低いのよ。思いやりがあって、コミュニケーション能力も高い」

 オーナーには、素っ気ない態度じゃないんだね。

「意外でしょう?」
 意外だから驚いた、図星が表情に出てたかな。

「坂さんの話してくださる卯波先生は、私が会ったことがない卯波先生です。初めまして卯波先生で驚きです」

「おもしろいこと言うわね」
 坂さんが教えてくれた卯波先生の雰囲気が、私のイメージする卯波先生とかけ離れているんだもん。

「どちらが医学的に正しいかよりも、オーナーがなにを心配して言ってるのかに目を向けて、話を引き出してる」

 坂さんの話を、ほうほうって、またふくろうみたいに聞き入る。初めまして卯波先生だよ。

「本当に聞き上手なんですね」

「それも一理あるし、そのほうが多くの患畜の情報を得られるのを知ってるから」

 坂さんが自分のことのように答える表情は、したり顔。
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