政略夫婦は念願の初夜に愛を確かめる〜極上御曹司の秘めた独占欲〜
「そうなんだ。私もひとりなの。じゃあ、一緒に食事でもしない? ほら、この間ちょっと話したうちの新規事業との提携のことも詰めたいし」
思いついたように早苗が食事に誘ってきて、検討する間もなく「いや」と声が出る。
「今日は遠慮しておく。提携の件は東京に戻ってから改めて話そう」
この間の食事の際、彼女の会社の新規事業については話を聞いていた。
脱毛専門サロンの展開を経て、今度はエステ事業にも新規参入を考えているという。
アロママッサージなどのリラクゼーションサービスの事業を、うちのホテルと提携して行えないかとビジネスを持ち掛けられたのだ。
決して悪い話ではないため、前向きに検討したいと返事はしていた。
「えぇ? なんで? まだ仕事中なの?」
「ああ、それもあるし──」
断りの途中で突然、早苗が俺の腕を掴む。
一体何事かと見下ろした俺の顔を見上げ、早苗は神妙な面持ちで目配せをする。
「なんだよ……?」
「あそこの、ソファにかけてるスーツの、ベトナム人の男性」
小声で話しだした早苗は、どこか警戒しているような様子を見せる。
言われた方向になんとなく目を向けて、確かにベトナム人と思わしき男性がこっちを、早苗をじっと見ていた。