政略夫婦は念願の初夜に愛を確かめる〜極上御曹司の秘めた独占欲〜
「実はさっきから何度も言い寄られてるの。断ったんだけど、しつこくて。部屋に戻ろうと思っても、ついてこようとするから。だから戻るに戻れなくて。怖いでしょ?」
そう言った早苗は掴んでいる俺の腕を引っ張った。
「だからお願い。連れのフリして部屋までついてきて」
「あ、おい」
強引に連れ出され思わず声が出たが、もしできないと拒否をして万が一何か起きてしまったら……。そんなことが一瞬頭に浮かんだせいで、早苗に腕を引かれたままロビーラウンジをあとにしていた。
友人の頼み、そして何より今の彼女は〝お客様〟なのだ。無下にはできない。
「ありがとう。拓人がいて助かっちゃった」
部屋の前まで送り、早苗がカードキーを手にしたのを目に口を開く。
「もう大丈夫だな。じゃあ──」
「あぁ、待って!」
踵を返しかけたところで引き止められる。急いでドアを解錠した早苗が、突然距離を詰め俺の腕を取った。
「ちょっと寄っていってよ」
「いや、それはやめておく」
「奥さんの、茉莉花さんのことで話があるの」