政略夫婦は念願の初夜に愛を確かめる〜極上御曹司の秘めた独占欲〜


「実はさっきから何度も言い寄られてるの。断ったんだけど、しつこくて。部屋に戻ろうと思っても、ついてこようとするから。だから戻るに戻れなくて。怖いでしょ?」

 そう言った早苗は掴んでいる俺の腕を引っ張った。


「だからお願い。連れのフリして部屋までついてきて」

「あ、おい」


 強引に連れ出され思わず声が出たが、もしできないと拒否をして万が一何か起きてしまったら……。そんなことが一瞬頭に浮かんだせいで、早苗に腕を引かれたままロビーラウンジをあとにしていた。

 友人の頼み、そして何より今の彼女は〝お客様〟なのだ。無下にはできない。


「ありがとう。拓人がいて助かっちゃった」


 部屋の前まで送り、早苗がカードキーを手にしたのを目に口を開く。


「もう大丈夫だな。じゃあ──」

「あぁ、待って!」


 踵を返しかけたところで引き止められる。急いでドアを解錠した早苗が、突然距離を詰め俺の腕を取った。


「ちょっと寄っていってよ」

「いや、それはやめておく」

「奥さんの、茉莉花さんのことで話があるの」

< 41 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop