政略夫婦は念願の初夜に愛を確かめる〜極上御曹司の秘めた独占欲〜
「ごめん、じっと見つめて。可愛いなと思ってたらつい」
「えっ、いえ、そんな」
突然の発言にしどろもどろになる。
そういうことは、自分の奥さんにしか言わないことではないのだろうか?
私はもちろん拓人さんにしか言われたことがないから、そうだとばかり思っていた。
早苗さんに比べたら、私は全然大人の女性の魅力もないし、〝可愛い〟と言われるような子どもっぽい雰囲気だと思う。
それとも隆史さんは、気軽な挨拶のようなノリでそういうことを言えてしまう人なのかもしれない。
エレベーターが二十七階に到着し、荷物を持ってくれている隆史さんに先に降りてもらう。
部屋の前まで急いでいき、玄関ドアを開けた。
「すみません、ありがとうございました」
「重いから、中まで運ぶよ」
「え、あ、でも」
受け取ろうと出した手をスルーし、隆史さんは玄関を入っていく。
当たり前のように「お邪魔します」と言って靴を脱ぎ、奥へと入っていった。
親切で運んでもらっているのはわかっているものの、家にまで上げてしまって良かったのだろうかと不安になる。