政略夫婦は念願の初夜に愛を確かめる〜極上御曹司の秘めた独占欲〜


 玄関で扉の閉まる音がし、同時に隆史さんがぱっと私から手を離す。

 状況が把握できていないうち、玄関からリビングへと入ってきた拓人さんの姿に目を見開いた。


「拓人さん。今日、お帰りだったんですか?」


 予定では帰宅は明日のはず。そう知らされていたから、今日はひとりだし夕食も適当に済ませようなんてだらけ心でいたのだ。

 急な予定変更だったのだろうか? 急いで支度しないと……。


「うちで何を?」


 リビングに入ってきた拓人さんの第一声は、隆史さんへと向けられたものだった。

 明らかに普段と違うピリッとした雰囲気に、黙ってその場を見守るしかできない。


「すみません、茉莉花さんと下のエレベーターホールでお会いしまして。両手に重い荷物を持たれていたので、運ぶのを手伝わせてもらいました。勝手に上がり込んで申し訳ない」


 事情を説明した隆史さんは「では、失礼」とそそくさとリビングを出ていく。しばらくすると玄関が開閉する音が聞こえた。

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