政略夫婦は念願の初夜に愛を確かめる〜極上御曹司の秘めた独占欲〜
「ありがとうございます」
不意に出された大きな手にドキドキしながら指先に触れる。
「待っていた」
拓人さんは私の手を取り、指を絡ませ繋いでくれた。エントランスに向かって手を引いていく。
「思い付いたように誘って悪かった」
「いえ! 今日は教室もない日ですし、お誘い嬉しかったです」
今日はその連絡がきたときからずっと、一定の鼓動の速さを保っている気がする。
支度をしている間も拓人さんのことばかり考えていた。
「今日はいつにも増して美しい。オシャレして来てくれたんだな」
「え、あ、はいっ」
私の姿を目に映し、拓人さんは綺麗な顔に微笑を浮かべる。
会って早々にそう言ってもらえ、良かったとホッとしたのと同時に鼓動が高鳴った。
高い吹き抜けになっているエントランスホールに入っていくと、お客様対応中ではないベルスタッフやフロントに控えるスタッフが、こちらに向かって丁寧に頭を下げる姿が目に入る。
副社長である拓人さんが訪れているときはより一層身が引き締まる思いなのだろう。