迷彩服の恋人 【完全版】

まさかの再会 ◆真矢 side◆


…まずいな、男性陣(おれたち)側もそうだけど…桧原さんたち女性陣、待たせてる待たせてる!

時刻は、1900 (ヒトキュウマルマル)――。

――【現在地、送れ!】

志貴先輩から、そんなメッセージが来たのは地下鉄を降りる直前。

それで俺は、改札を抜けながら――。

――【現在地、目的地の最寄り駅。】と送ると…

――【了。"駆け足"!】と返信が返ってきた。

その一言に乗せられて、自然と足が速くなる。
「駆け足!」と言われれば「走ってこい!」と言われているようなものなので、急いでしまうのだ。
――習慣って恐ろしいな。

そして、ここ最近の俺には、【先輩に絶対に従わなければならない理由】がある。

いろいろと"借り"があるし、ある意味で"弱み"を握られてしまっているのだ。

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「土岐、どうした?…何かボーッとしてないか?まぁ、昼休み中だし…まだいいけど。」

「別に…何でもないですよ。」

「"何でもない"は嘘だな。お前、この時間だいたい部屋に1回戻って、筋トレするか車の雑誌見るか何かして…頭空にしてるだろ。なのに、今日は煙草吸いにきてんじゃねぇか。お前が煙草吸うのは"マイナス感情がある時"か"気になってることがある時"って決まってんの。」

「はい?誰が決めたんすか。」

「俺。」

「フッ!何すかそれ…。」

「…で?何だよ。」

「機密事項につき漏らせません。」

「頑なだな!おい。…まぁいいか、何かあったら言ってこい。」

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これが〝望月さん〟と出会った翌日の昼休みに、志貴先輩と交わした会話だった。

先輩には打ち明けても良いと思う一方で、からかわれるから面倒だなと思うところがあったのだ。
結局、この時は打ち明けることなく終わったが、"少々たるんでいるな"と俺自身が感じたため考えないようにしたつもりだった――。

しかし、実際そう上手くいかず…"考えないようにしていたつもり"だっただけで、"考えてしまっていた"のだということに…先輩の発言で気づかされたのは、さらに2日が経過した日のことだ。

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「土岐、やっぱお前…ボーッとしてるぞ。仕事に影響する前に…どうにもならないなら、吐き出せよ。」

「はぁ〜。分かりましたよ。先輩、ここだとちょっとあれなんで俺の車へ。」

**

「…で?なに、どうした?」

「3日前、要救護者を病院へ運びました。」

「なるほど、お前らしいな。その様子だと…相手は女性だな。もちろん"野郎"のことでも気にはするだろうが、今のお前…隙あらばボーッとしてるからさ。さすがに"野郎"相手にはそんなことにはならないだろ?」

「そんなにボーッとしてます?」

「…してるな。そんなに心配するほどの酷いケガだったのか?」

「いえ、捻挫です。ただ、ご家族の方が来られるまで付き添いたかったんですけど、“森下技曹”と当直を代わらなきゃいけない状態だったので――。」

「そうか。あの日にそんなことがあったのか。お前の性格からしたら…そうだろうな。でも、まぁ…捻挫だし、大丈夫だろう。連絡先は…慌てて戻ってきたなら聞いてないか…。」

「はい…。」

「まぁ、現状だと手掛かりが無いからどうにもならないけど…縁があったらまたどこかで会えるんじゃないか?…『気にするな』とは言わないし、今のところ仕事には集中してるみたいだから大丈夫だと思うが、仕事に支障が出るのはまずいから記憶を薄れさせていけよ。」

「はい。」

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これでこの話は終わるかと思ったのに――。
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