迷彩服の恋人 【完全版】
「えっと、私ですよね…。望月 都(もちづき みやこ)と申します。"インドア派"で、読書も好きです。」

そう言いながら、なぜか目を伏せ…話し声もだんだん小さくしていく望月さん。

「え、〝もっちゃん〟自己紹介それで終わりなの?もうちょっとアピールしないとさぁ。」

「あはは…。朝香先輩、もう酔っちゃったんですか?…それに、"今日のメイン"は朝香先輩と〝若手の2人〟じゃないですか!〝ピンチヒッターの私〟が話す時間なんて、少なくていいですよ。…あっ、土岐さんと中崎さん。グラス空ですね、2杯目注文しますか?中崎さんのお近くだと、メニュー表…志貴さんのところにありますよ。」

「ありがとうございます、望月さん。」

あぁ、この乾いた笑い。
俺と同じだったんですね…。

…あっ、ほんとだ。
飲み食いしてないと暇を持て余すから…ペース早くなったな。
それにしても…。よく見てますね。

望月さんは、やっぱり〝周りをよく見ている人〟らしい。

「都ちゃん、食べ物の追加も一緒に注文してくれる?……そんなわけだから、席替えするなり何なり進めていいわよ、巴。」

桧原さんは、望月さんの味方のようだ…よかった。
ひょっとして、志貴先輩と桧原さんの通話中によく話題になっていた〝かわいい後輩〟は望月さんのことだったんだろうか…。

こうして全員の自己紹介が終わり、いわゆるフリートークの時間に突入していく。

「そーいえばぁ、さっきぃ。桧原主任と志貴さんの話聞いてて、分かんないこといっぱい言ってたんですけど…土岐さん、教えてくれませんか?」

「私も教えてほしいです。」

席替えするように促されると、花村さんと栗原さんがすかさず寄ってきて矢継ぎ早に質問される。
まぁ、自己紹介の時ろくに喋ってないからな…。

「どんなこと言ってましたか?」

「えっと、『現在地、おくれ。』とか、"ガイキン"とか"トクガイ"とか…いろいろ言ってました!」

「あぁ、なるほど。"おくれ"は"返事下さい"という意味です。『現在地、送れ!』っていうのは『今いる場所を教えて。』とか『報告するように!』って意味で使われます。自衛隊用語というやつですね。」

「先輩、なんで説明してないんですか。」

俺は、隣に座る先輩に不満を漏らす。

「朝香さんが、俺たちの職業当てるって言うから現時点までノーヒントだったんだよ。」

「あぁ…了解。」

「すみません。私のワガママに付き合ってもらっていたんです。私、制服姿の男性に弱くてー。自衛隊の方ともお知り合いになりたかったんですよね。」

あー。"そっち"か。なるほど。

「あー。いらっしゃいますよね、〝男性の制服姿がお好きな女性〟。」

「ちなみに"ガイキン"は外出禁止の略で、"トクガイ"は特別外出の略…外泊を含んだ外出のことです。」

ここで麻生さんや中崎も会話に入ってきて、花村さんと栗原さんも負けじと相槌(あいづち)を打っている。
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