クールなあおくんに近づきたい!〜あと10センチ、きみに届け〜
***



「細流はちょっとここで休んでろ。寂しいかもしれんがどうせもう少しで終わるから。な。」

「…はい…」

寺田先生がそう言って私に氷嚢(ひょうのう)を渡してくれる。

恥ずかしい話を深く追求せず去っていく優しい先生の後ろ姿に、あぁ、担任が寺田先生でよかった、と心から思う。

遠くに見える花乃ちゃん姫ちゃんは、他クラスのビーチボールメンバーに駆り出されて忙しそうにしている。

対して、まるで別世界みたいに寂しいテントの下、一人ぼっちで体育座りする私。





来て早々何してるんでしょう。

真っ赤に腫れあがったおでこに冷たさがどんどん浸透して痛みを麻痺させていく。

うぅ…

前髪で隠しきれないくらい大きなたんこぶになったらどうしよう…

撮る写真全部おでこポッコリガールになってしまう…

卒アルに載ったりしたら一生おでこポッコリガールとしてみんなの記憶に残ってしまう…うぅ。


…んーん、落ち込んじゃダメだよ、細流寧々。

今日は、待ちに待った宿泊研修。

ネガティブになってる時間なんてもったいない!

そーだ!こんなときこそ逢和君ウォッチングだ!

いつだって逢和君をひと目見れば私の気分なんて一瞬で最高になっちゃうもんね。


…あれ?

どこ行っちゃった?

さっきまでキヤ君たちとビーチボールしてたと思ったんだけど…






「うお!?」
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