クールなあおくんに近づきたい!〜あと10センチ、きみに届け〜
…なんて。そんなわけないかぁ。

お世辞だとわかっていても素直に嬉しくて、つい笑顔が溢れる。

「木村君ありがと〜」

「あ…、ん、ううん。」

そう言って恥ずかしそうに長いまつ毛を伏せて目を泳がせる木村君に、妙に和んだ私は目を細めて顔を緩ませた。

木村君は、とっても可愛い男の子だ。

目が大きくて顔が小さくて、身長が私とほとんど変わらないくらい小柄で。

スカート履いて長い髪のウィッグなんてつけちゃったら、女として負けてしまいそうだ。

控えめな性格でいつもちょっと緊張してる感じで、似たような性格の私からするととても落ち着く存在。

でも、人によってはちょっとイライラしちゃう…らしい。

可愛くて癒されるけどなぁ。

「…あ、せせらぎさん。髪にゴミついてる」

「ほんと?どこ?」

「…動かないで」

髪を触ろうとした私の手を制して、木村君が真剣な表情で私の後頭部に手を伸ばした。

ぷちっと音がして、ほんのちょっと痛みが走る。

「…ッ」

「…あ!ごめん!取ろうとしたら髪抜いちゃった…!ごめん、ごめんね…!痛かった!?」

木村君が大慌てで涙目になる。

「あ、全然!全然大丈夫だよ。取ってくれてありがとう~」

「そう…?よかった。ほんとごめんね」

木村君が潤んだ瞳で上目遣いする。

…可愛い。

もし私が男の子だったらうっかり恋に落ちちゃうんじゃないかな…?

「大丈夫だよ、気にしないで~」

手を拡げて大丈夫アピールをしたところで、わたしたちを乗せたゴンドラが頂上に到達した。
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