春色の恋−カナコ−[完]
必死に涙がこぼれないように我慢して、首を小さく横に振った。

「おや、残念?」

まるで当たり前のようにすっと私を立たせると、再び私を腕のなかにすっぽりおさめた河合さん。

「今度はお休みの前の日に、ね?」

そんな事を言いながら、耳元にキスをしてくれた。

「さあ、お兄ちゃんが待っているよ」

私の手を取り、あいている手でキーと私の鞄を持ち、玄関へと足を進める河合さん。

そんな彼について、私もなんとか足を動かして河合さんの後を追う。

玄関で靴を履いている河合さんの背中を見ていて、なんだかこのまま別れるのも嫌で思わず抱きついてしまった。

「うわ!カナコちゃん?」

びっくりして前に倒れそうになった河合さんだったけど、そのまま背中で私を受け止めてくれて。

「…好き」

「え?」

「私も、コウスケさんが好き」

ぎゅっと河合さんにまわした腕に力を入れると、そっと私の手を河合さんの手で包んでくれた。

「うん、わかっている。さっきは意地悪してごめんね?」

優しい、大きな河合さんの手に包まれて、ただそれだけで幸せな気分になれてしまう。


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