知ってしまった夫の秘密
 この日の夜、スマホに見知らぬ番号からショートメールが届いた。
 不用意にタップして開いてしまったのだけれど、そこには衝撃の内容が書かれていた。


『私は紺野 巡二さんと同じ会社で働いている村本 利英(むらもと りえ)といいます。巡二さんは私の恋人です。なので早く離婚してください。ふたりで会って話せませんか?』


 これが単なる迷惑メールならどんなによかったか。
 けど、個人名がはっきりと書かれているし、私あてに送ってきたメールで間違いない。
 
 巡二が……不倫している? ……なにこれ。
 頭を鈍器で殴られたような衝撃が走った。

 イタズラかもしれないが、無視もできなくて。
 私はしばらく考えこみ、悩んだ末に「会いましょう」とメッセージの返信をした。
 なにがなんだかわからないからこそ、相手の話をとりあえず聞いてみるべきだと思う。

 明日の午後に彼女が半休を取るとのことで、私の仕事が終わり次第会う約束をした。
 場所は私が働いているレストラン近くにあるレトロなカフェだ。

 指定しておいた窓際の席には、小柄でかわいらしい女性が座っていた。
 茶色く染められたセミロングの髪を耳にかける仕草が、わざとらしくもあるが艶っぽい。
 黒髪で大人っぽいと言われる私とは外見のタイプが全然違う。本当にこの人が巡二の不倫相手なのだろうか。

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