知ってしまった夫の秘密
「だからって、あせってどうこうするつもりはない。俺は真琴さんの傘になれたらそれでいい。でも……」


 話の途中で佑さんは椅子から立ち上がり、私をじっと見下ろす。


「真琴さんの身辺の整理がついたら、俺は遠慮なくいくから。これはその予告」


 長い腕が伸びてきて、あっという間にギュッと抱きしめられた。
 なにが起こったかわからなくて、ドキドキしながら固まっていると、離れ際に佑さんがチュッとキスを落とした。
 触れるだけの、ふわりとしたやさしいキスを。


 翌日、私は昼間に荷物をまとめて家を出た。
 新しく住むところが決まるまで、しばらく佑さんの部屋に泊めてもらったけれど、私たちは一線を越えることはなかった。

 そしてあらためて巡二と向き合って冷静に話し合った。
 離婚はしないと最初はゴネていた巡二だったが、私はたとえ裁判になってもあなたと別れるつもりだと告げると、最後はあきらめて離婚届に判を押した。



「さぁ、俺と存分に恋愛しよう」

「離婚してすぐにそんな気持ちにはなれません」

「だよな!」


 レストランで大好きなコーヒーを淹れながら佑さんと笑いあう。

 人生はまだまだこれから。
 下を向くのではなく、前を向いて新しい未来を切り開いていきたい。




――― End.

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