知ってしまった夫の秘密
 私が間抜けな声を出した途端、そこで会話がプツリと途切れてしばし沈黙が流れる。
 佑さんの表情をうかがうと、急になにかに気づいたように目が泳ぎ始めた。


「ち、違う! 変な意味で言ったんじゃない。俺は休憩室のソファーで寝たらいいし、それも嫌だって言うなら俺が友だちのところに泊めてもらうから。決してベッドで一緒に寝ようとか考えたわけじゃなくて!」

「一瞬ドキッとしたけど、そうですよね……同情してくれてるだけですもんね」


 ズズッと鼻をすすりあげながら、自虐的に笑ってみせた。
 イケメンで独身の佑さんが、私なんかに間違っても手を出すわけがない。そんなことは冷静に考えればすぐにわかる。


「同情はしてるけど、下心がまったくないって言ったらウソになるかな」

「佑さんは、私が女に見えるの?」

「当たり前だろ」


 その発言はにわかに信じがたい。お世辞を真に受けるなと自分に言い聞かせた。


「初めて会ったときから素敵な女性だって思ってた。でも真琴さんが結婚してるって知って撃沈したんだよ。なんで俺が旦那さんより先に出会わなかったんだろうって」

「……ウソ」


 チラリとこちらに目線を送ってきた佑さんの顔がいつもより少し赤い。
 恥ずかしさからか、バツが悪いのか、眉をひそめている。

< 34 / 35 >

この作品をシェア

pagetop