夫の一番にはなれない
俺は、彼女の気持ちをちゃんと受け取ってこなかった。
奈那子は、笑っていたけど――
その笑顔が、どれだけ無理して作ったものだったか、今なら分かる気がした。
保健室を出ていく2人の後ろ姿を見ながら、俺は静かに息を吐いた。
「……俺も、ちゃんと話さないとな」
誰に言うでもなく、ぼそりとつぶやいた。
部屋にはもう、俺と奈那子しかいない。
それなのに、何も言葉が出てこなかった。
“今さら、何をどう言えばいいのか”
それが分からないから、俺はずっと黙っていたんだ。
でも――そろそろ、変わらなきゃいけないのかもしれない。
こんなふうに、自分の気持ちを見透かされたような日々を過ごしていくくらいなら、ちゃんと向き合ってみた方が――
少しは、楽になれるのかもしれない。