夫の一番にはなれない
彼――滝川來は、仕事ばかりで恋人を放っていたことを後悔していた。
わたしは、信じすぎたことを悔いていた。
ほんの少し言葉を交わしただけで、彼が誠実な人だとわかった。
「気分がまぎれました。お礼に、今度コーヒーでも奢らせてください」
これは社交辞令だと思った。
連絡先も交換していないし、もう会うこともない。
そう思っていた。
でも、それから一ヶ月後――
わたしたちは再び、偶然にも出会うことになる。
仕事帰りの駅前で、信号待ちの人混みの中。
「……横井さん?」
「……滝川さん」
そこから、少しずつ会うようになった。
最初はカフェで軽く話すだけ。
次第に仕事の愚痴や、日々の小さな出来事を話すようになっていった。
互いにまだ、過去を引きずっていた。
でも、一緒にいると、不思議と心が落ち着いた。
そしてある日――
「俺たち、結婚しませんか?」
その言葉に、私は一瞬、時が止まったような気がした。